大きくする 標準 小さくする

2013年05月10日(金)更新

【新著連載】Q09.失敗するのが怖い

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.失敗するのが怖い

→A.若いうちの失敗は「準備運動」と心得る

 今、振り返ると、若い頃に恐れていた「リスク」の数々は、「リスク」のうちにも入らぬ「小さなリスク」にすぎなかったと気づきます。「リスク」を乗り切る力を持っているのに、それに気づかずビビっていた自分に、思わず微笑んでしまいます。
 だからこそ、若いうちに数々のリスクに挑戦していて良かったとつくづく思います。その結果として得られた貴重な経験や人との出会いの数々に深く感謝したくなります。
 
●会社を倒産させる日に集金に行くという修羅場

 私は、バブル崩壊後に、家業の久米繊維に戻り、まずは集金係をしながら、与信管理と債権回収の担当となりました。企業倒産が急増すると予想された時期です。そこで、数百社の企業経営者やキーパーソンとお会いしながら、「どの企業にどれだけ商品を掛売りしてもいいか」決める重要な仕事を任されたのです。危険を感じたら、商品の販売を中止して売掛金を回収するという「嫌われ者」の仕事でもあります。
 しかし、恥ずかしながら、いくつもの失敗をしました。例えば、集金を重ねるうちに親しくなり深く尊敬していた先輩経営者が、まさに会社を倒産させる日に集金に行くという修羅場に出くわしました。今考えれば、そんな日に会えて話が聴けたのも奇縁ですが、「リストラされ、うちに来ないかと声をかけた後輩にしてやられた」とのことでした。事の真偽はともかくとして、心やさしき文化人経営者が、ビジネス上は必ずしも信用できるわけではないということを知りショックを受けました。
 その失敗を知った父は、「会ってみて誰からも信頼されそうな人は、経営が甘くなりがちで、信用すると痛い目を見る。むしろ外見では信頼されない人のほうが、厳しく経営をしているので信用できる場合がある」と私に教えてくれました。
 それ以降、経営者と会う前に、帝国データバンクのデータベースの決算情報や評価を必ず見てから、客観的に企業経営の良し悪しを判断するようになったのです。
 調べれば、私が敬愛する優れた経営者や指導者ほど、「若さゆえの失敗談」にはことかきません。だからこそ、自らの経験をふまえて「若いうちに積極的に挑戦をして欲しい。前向きな失敗をして欲しい」と願っているのです。若いうちの失敗は、本人には大きな経験でも、組織にとっては痛手にならない損失で収まるからです。むしろ前途ある若者に対する、生きた「研修費」だと考えることでしょう。そして、心ある若者なら、自分の失敗を許してくれた経営者や組織に、感謝と愛着もわくはずです。

●失敗しても粘り強く実行すれば達人が応援してくれる

 若いうちに「リスク」に挑戦するメリットは、まだあります。知識や経験が足りなくとも、夢と情熱を抱く若者は、人生の達人たちに歓迎されて教えを請えるのです。
 私自身、大学などの起業論講師として、夢を熱く語り、素直に教えを請いにくる若者と出逢うことが最大の喜びなのです。たとえ、失敗しようとも、素直に教えに耳を傾けて、粘り強く実行し、報告・連絡・相談を欠かさない若者が大好きなのです。
 しかし、残念なことに、そんな若者に出逢うことは、ほとんどありません。若き起業家は、いまや日本における希少資源なのです。だからこそ、自分の能力や経験をはかりにかけて、できない理由ばかり列挙するのはやめましょう。例えば、目の前に、新規事業や海外異動など、みんなが二の足を踏むような「リスクに満ちた挑戦」があれば、大きなリターンを得る「絶好のチャンス」です。みんなが顔色をうかがっている時こそ、「見る前に跳ぶ」勇気を持って、ひとりきりであっても手をあげましょう。今は大きなリスクに見えても、将来、もっと大きな起業に挑戦する時には、軽い準備運動だったと思うはずです。しかし、若いうちに準備運動をしておくことが大切です。リスクに立ち向かう基礎体力を磨くことで、未来を楽しく楽に迎えられるからです。

A.若いうちの失敗は「準備運動」と心得る

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です