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2013年06月04日(火)更新

【新著連載】Q21. 新しいことをやりたいんです

Q. 新しいことをやりたいんです 

→A.危機感を持った先進的リーダーに提案しよう

 起業家の大好物は、新しいこと=簡単にはクリアできない困難なこと=スキル向上や師匠とのご縁が期待できること=達成時に大きな喜びが待っていることです。
 実は、大きくて伝統的な組織ほど、イノベーションが必要とされているのですが、逆に保守的になって新しいことを排除する風潮が見られます。だからといって諦めてはいけません。保守的な組織の方がトップに危機意識が強い場合が多く、新規事業のために新しい組織を作り、若い人も思い切って登用して打開しようとするからです。もしも、所属している組織では理解が得られなくとも、急増しているNPOなど外部の組織で、新しいことを実現するチャンスに恵まれることもあるのです。

●帝国データバンクのようなNPO版データベースを

 例えば、私がライフワークとしている日本最大の公益ネットワーク、日本財団の「CANPAN」が設立された時のことをご紹介しましょう。
 日本財団は、競艇の収益金の一部を、国内外の公的な事業の助成に活かす団体です。歴史でも規模でも日本を代表する組織ですが、会長の笹川陽平さんは、時代の潮流に合わせて「民が民を助ける新しい仕組み」が必要だと考えていました。政治家や役人に頼らず、心ある人が社会起業家となって公的な事業を興す。心ある企業や個人が、それを物心両面で支えていく。そんな新しい社会を構想していたのです。そんな矢先、インターネットが出現して、その流れを加速するのではないかと直観されたのです。
 この戦略的な新規事業を、当時財団の企画部長だった寺内昇さんが任されました。寺内さんとは、ソフト化経済センターのイベントで出会い、私の講演やネットでの発言や、メール道などの著作に注目してくださいました。そして、構想中のNPO向けデータベースやブログサービスについて助言を求められたのです。
 寺内さんの熱いご説明で、私は、すぐにこの事業の将来性や社会性を理解することができました。幸か不幸か、私は日本財団の職員でもNPO関係者でもなかったので、利害関係や先入観にとらわれない客観的な視点で、あるべき姿を提案いたしました。
 例えば、NPOの中には、立派な活動をしている団体もあれば、形骸化した団体もあります。さらには反社会勢力と繋がっている団体さえあります。ですから、個人も法人も、どこを信頼して応援していいかわからないのです。そこで、企業の信用情報を簡単にネットで調べられる「帝国データバンク」のような仕組みが必要だと提案しました。

●先進的なリーダーは新しい提案に耳を傾けてくれる

 また、NPO向けのブログでは、これまでの無料ブログサービスの常識を覆して、
1)実名を公開すること 
2)知的所有権は発信元の団体と個人に帰属すること 
3)収入を得るためのアフィリエイトリンクも自由にすること 
4)日本財団など公共広告以外は入れないこと 
5)寄付金や会費集めにも使えること 
 などを提言しました。
 驚くことに、私の提案の多くは採用されました。笹川会長も寺内部長も、部外者の若造=私の意見に耳を傾けてくれたのです。さらに、この新ネットワークを運営するNPO法人CANPANセンターの理事にまで、私を抜擢してくださいました。こうして、私は、日本で初めての公的ネットワークの設立に参画することができたのです。
 それだけではありません。笹川会長は、拙著『ブログ道』も読んでくださり、自らブログを開設しました。NPOのリーダーが、現場でどんな活動をどんな想いで続けているか、自ら率先垂範で発信したのです。たとえ炎上しようとも、決して軸をぶらさず、時には赤裸々に、時にはユーモアを交えて、毎日ブログを書き続けたのです。
 それをお手本に、全国のNPOの先進的なリーダーたちも、現場の生き生きとした情報を発信し始めました。そして、大きな支援を集める成功事例も。次々に生まれました。例えば、第一回のCANPANブログ大賞を受賞したチャイルドケモハウスは、「夢の病院を作ろう」とCANPANを通じて呼びかけ、ついに夢を実現させました。
 「新しい酒は新しい革袋に入れよ」という諺の通り、改革を新しい組織や人財で行なおうとしているリーダーは必ずいます。この激動期には、自分が属する組織でも、ご縁のある身近な組織にも、新しいリーダーの出現が求められています。そんな潮流に乗って、新しいリーダーに新しい提案をして、若い知恵と力を存分に発揮しましょう

A.危機感を持った先進的リーダーに提案しよう