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2013年05月28日(火)更新

【新著連載】Q19.仮説はどうやって立てればいいのですか?

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.仮説はどうやって立てればいいのですか?

→A.原則として外れることを前提に「計画的失敗」のち「修正」

 新しい事業や商品を生み出す起業家は、アイディアあふれる仮説構築の達人だと思われがちです。しかし仮説立案には「試行錯誤の繰返し=計画的失敗」が不可避です。

 1.不満や不便を感じて課題を見つけるための行動力
 2.課題を解決できる仮説を考えるための情報収集力
 3.課題をいったん忘れ、体験や出会いを重ねて「ひらめき」を待つ熟成力
 4.仮説を実行して失敗を重ねては、検証を繰り返す試行錯誤力

 なぜなら、「仮説は原則として外れるもの」で「思い込みの強い仮説ほど外れがち」だからです。試行錯誤を繰り返し、さまざまな失敗体験と、思いがけない出会いを通じて、仮説は修正され、磨き上げられ、やがて成功に近づいていくのです。
 例えば、私の著書の中で、最も多くの方に愛読されているロングセラー『「すぐやる!」技術(2013年6月現在、27刷20万部)」が誕生したプロセスを見れば、「いかに安易な自分の仮説があたらないか」「お客様やパートナーの助力が大切か」がよくわかります。

●明大での講義をもとに「起業論のテキスト」出版を目論んだものの…

 ことの始まりは、明治大学商学部教授の村田潔先生から、クリエイティブ・ビジネスコースの講師を拝命したことです。ベンチャービジネス論と起業プランニング論を教えられる経営者を探しているとのことで、二つ返事でお引き受けをいたしました。村田先生が語る社会的な意義に共鳴したからです。同時に、「明治大学なら、中小企業経営者のご子息が多いので、志も商売の基礎知識も兼ね備えているはず。教育効果が上がるはず」との仮説を抱いたからです。そして、当時からおつきあいのあった編集者で、日本実業出版社にお勤めだった佐藤聖一さんにも講義に参加していただきました。この講義をもとに「起業論のテキスト」を出版しようと目論んだからです。
 ところが、この仮説は大きく外れました。最初の講義に参加した約100名の学生のうち、「経営者のご子息」は、わずか数名しかいなかったのです。その上、起業論を志しながら、「あいさつもスピーチも苦手」「簿記の資格もない」「ドラッカーや松下幸之助の著作も読んでいない」という学生が大半でした。さらに「必ずしも起業を志しているわけでも、経営者になりたいわけでもない」と言うのです。何より哀しかったのは「好きなモノやコトを一年間ブログでお勧めする」という簡単な課題に対し、「好きなモノがない」「一年間も書くネタがない」と脱落する学生が続出したことです。
 ということで、私の仮説は大きく外れました。当然ながら、講義の内容も、出版予定だった本の中身も、大幅な変更を余儀なくされました。しかし、手を抜くわけにはいきません。受講生たちの声に耳を傾け「何が望まれ、何が必要とされているか」を感じ取りながら、等身大の講義を続けていきました。最後まで完走してくれた学生は、わずか10名あまりに減ってしまいましたが、なんとか満足のいく講義ができました。

●イマドキの若者の現実を目にした編集者からの企画提案

 そして一年を終えたところで、ずっと講義に参加してくださった編集者の佐藤さんが、なんと書籍の企画案をもってきてくれました。それは、若者たちが一歩前に踏み出しすための自己啓発本の原案でした。講義中、私がアドリブで学生たちに叱咤激励する言葉に感動してくれた佐藤さんが、その内容を箇条書きにして章立てしてくれたのです。それは、私の思い込み仮説による企画「志の高い起業家志望の若者向けの実業テキスト」ではありませんでした。イマドキの若者の現実を目にした佐藤さんの実感にもとづく企画『考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術』だったのです。
 もともと現場主義の私は、自己啓発本が好きではなく、書く気もありませんでした。しかし、1年間の講義で目の当たりした現実と、佐藤さんの真剣なまなざしに、私は動かされました。さっそく佐藤さんの名リードのもと、ブログを使った公開執筆を始めました。学生たちにネット連載の見本を見せたかったのと、同じやり方で旧著『メール道』がアマゾンの販売ランキング総合2位になったのを思い出したからです。
 いざ出版されると、予想を超えることが次々に起こりました。学生や若者向けの本のつもりが、経営者や管理職、さらには理系やIT系のエンジニアの方々にも愛読されたのです。「仮説は外れる。現実に即して修正を続けよ」と現実から学んだのです。

A.原則として外れることを前提に「計画的失敗」のち「修正」

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い
Q12.人から笑われるのが怖いんです
Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか? 
Q14.もっと大きな仕事をしたい
Q15.未来を見通す目がほしい
Q16.すぐに現状に満足してしまう
Q17.付き合う人の幅を広げたい
Q18.人と違った情報が得たい

2013年05月27日(月)更新

【新著連載】Q18.人と違った情報が得たい

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.人と違った情報が得たい

→A.パラボラ力×ズーム力を最大化する

 起業家と小勤め人の大きな違いは、新しく役に立つ情報をキャッチする「パラボラ力」と、それをビジネスや人生に活かせるまで観察し続ける「ズーム力」でしょう。社内情報や、マスメディアに頼っているだけでは、人と違った情報をキャッチすることはできません。インターネットは有効な手段ではあるものの、それだけでは、事業計画のヒントとなる、現場情報も達人の声も入ってこないのです。

1.師匠を探して勉強会に参加しよう。質問と発言をしよう

 私が最も「人と違った情報」に接することができたのは、社団法人ソフト化経済センターのソフト化賞選考委員会でした。ソフト化経済センターは、日本で最初に「ソフト」の価値を提唱した、わが師 日下公人先生が設立したシンクタンクです。ソフト化賞は、日本の進むべき未来を示す「先端的でソフトな試み」を表彰する賞でした。
 当時、ソフト化経済センターの客員研究員だった私も、幸運にも、その審査委員の一人に選ばれました。そこでは、自分のネットワークの中から、ソフト化賞にふさわしい候補を探し出して推薦するのです。シンクタンクの主任研究員、出版社の編集長、フリーのライター、ベンチャー起業家など、異業種の精鋭が探し出しくる企業や団体は、それぞれ個性的な候補ばかりでした。
 それだけでも、私にとっては大いに勉強になりました。委員のみなさんが、どんなルートで、どんな視点で探し出してくるか、審査委員会で知ることができたからです。
 しかし、日下公人先生は、いつでも「もっとあやしいものを選んでくるように」審査委員に助言するのです。つまり、今の時点で「新しい」「面白い」と感じる程度だと、すぐに古くなってしまう。今はまだ「あやしい」と思えるぐらいで、ちょうど良い。それこそ、10年後、20年後に花開く「新しいソフト」だというのです。
 そこで、もともと「パラボラ力」の高かった審査委員のみなさんは、日下先生のリクエストに応じて、もっと思い切り「あやしい」ものを探し出したのです。それから、10年ほどたって受賞作を振り返ると、たとえば、葉っぱビジネスの「いろどり」にしろ、東京電力の子会社「日本自然エネルギー」にしろ、当時こそあやしく見えたものの、今や、日本が進むべき道を示しているように思えるのです。

2.現場に行って現場の達人と会おう。お客様の気持ちで考えよう

 ソフト化賞の選考委員会で驚いたのは、みなさんが徹底した現場主義者だったことでした。既に、インターネットも普及していましたが、自分の目で確かめたものを中心に推薦していたのです。ジャンルこそ異なれ、全員に共通していたことは、自分の本業を極めながら興味の対象を広げ、面白いと思ったら実際に現場を訪ね、当事者に会っているということでした。どなたも、自分の目で見て、肌で感じたもの以外は、信用しないという信念を持っていたのです。これこそが真のプロ精神でしょう。徹底した現場主義を学んだことで、情報を凝視する「ズーム力」が身に付くのです。
 私は、地元墨田区をはじめ地域おこしのお手伝いをしていますが、まずは、お客様の気持ちで、先入観なしに現地を訪ねることから始めます。そして、ご当地で一番元気な人たちにあって、親しくお話をしながら質問を繰り返します。私にとって重要な情報を聞き出したいからです。それは「現地の人が楽しんでいるのに、多くの人が知らないこと」「私が魅力だと感じてるのに、現地の人が気付いていないこと」です。  
 つまり、起業家に必要な情報とは、現地で見つけた「ギャップ」なのです。

3.生涯役立つ自分だけの教科書=古典からマンガまでを探そう、読み返そう

 ベストセラーの流行書ばかり読んでいても独創的にはなれません。大切なのは、師匠が書いた本と、師匠が勧める教科書です。例えば、日下公人先生の本を十冊以上読んだ人と読んだことがない人では、世界の見え方が変わってくるはずです。そして、日下先生に教わった「ロジャースの普及理論」や「ポケモン」にふれたことで、「ソフト化賞は、なるべくあやしいものから選べ」という言葉の真意も判ってきました。古典から学んだ知恵をもって、徹底した現場主義に徹すれば、人と違う情報が見えてくるのです。

A.パラボラ力×ズーム力を最大化する

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い
Q12.人から笑われるのが怖いんです
Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか? 
Q14.もっと大きな仕事をしたい
Q15.未来を見通す目がほしい
Q16.すぐに現状に満足してしまう
Q17.付き合う人の幅を広げたい

2013年05月24日(金)更新

【新著連載】Q17.つきあう人の幅を広げたい

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.つきあう人の幅を広げたい

→A.生涯の師を3人見つける

 その人の「これまでの生き方」と「これからの可能性」は、深くおつきあいしている人たちを見ればわかります。これまでのキャリアを通じ、そこで出会える最高の人たちと公私共に交流している人もいれば、公私を分けてご縁が広がらない人もいます。現在の職場は、決して、ただ給料をもらう場所ではありません。自分のスキルを磨く修行の場であると同時に、将来、もっと大きな夢を実現するための師匠やパートナーを見つける場所なのです。ですから、私の明治大学商学部の講義では、「選ばれる自分になる。生涯の師やパートナーに出会う。認められる。」と毎回唱和するのです。 
 例えば、私が日興證券で働いた20代後半の5年間には、まったく異なる知見と経験を持つ「3人の素晴らしい師匠」に出会うことができました。

●そうそう出会えない達人たちの出会いをくれた師匠

 まず、イマジニア時代の元上司で、私を日興證券に誘ってくださった神戸孝さんは、今や、日本を代表する独立系ファイナンシャル・プランナー(FP)として、マスメディアや講演活動でも大活躍をされています。若輩の私に、相続・診断システムの企画開発という大きなチャンスをくださり、私の人生を切り開いてくれた大恩人です。
 神戸さんは、ベンチャー企業のイマジニアで働く前は、三菱銀行で銀行マンとして活躍されていました。そこで、銀行と証券の両方の知識を持ち、なおかつ、いち早くFPの重要性を理解されていました。ですから、会社の枠を超えて、銀行、証券、保険、不動産、税理士、コンサルタントなどとのネットワークを広げて、様々な勉強会や集まりにも、私をよく連れて行ってくださいました。だからこそ、私は、一つの業態、一つの会社にいたら、どんなに頑張っても出会えない素晴らしい達人たちの生き方や考え方に触れることができたのです。何より、神戸さん独自の、十年先を見据えた柔軟で幅広い発想と、社内外からスペシャリストを集めるネットワーク力が、新しい事業を起こす起業家として求められる「資質」だと体感できました。

●冷静に未来を予見する「あるべき経営者の姿」を教えてくれた師匠

 それから、日興證券でFP事業を企画した、当時 社長室次長、稲葉 喜一さんとの出逢いも、私にとってかけがえのないものです。稲葉さんは、その後、日興アセットマネジメントの常務を務められ、今はネットなどで投資家教育をされています。
 稲葉さんは、株が大好きだった企業経営者のお父様から「どうすれば儲けられるか」というミッションを受けて、日興證券に入社したそうです。東大を卒業後、米国のビジネススクールでも学ばれ、証券会社では一貫して経営企画・営業企画を歴任されていました。まさに日興證券の頭脳として活躍されていた稲葉さんからは、金融ビッグバンやインターネットの普及で、金融機関がどのようにいかに激変するかというヴィジョンを教えていただきました。バブルで誰もが浮かれている中で、冷静に未来を予見する「あるべき経営者の姿」を、稲葉さんから学んだのです。さらに、大きな組織では「面従腹背」で「自己保身」に走る中間管理職が増えるか、それを変えるのが難しいかということも教わりました。何より、経営者となる私に役立ったのは、日本人の常識を超える経営者目線での「金融市場の見方、投資の方法、金融機関との付き合い方」を学べたことです。稲葉さんとご一緒に、「証券会社が教えない危ないネット取引、上手いネット取引」という本を執筆したことも忘れられません。

●「かわいいやっちゃ」と思われるコミュニケーション術の師匠

 それから、同じ部門で支店とのパイプ役を果たされた笠榮一さんからは、営業の極意を学びました。笠さんは、個人営業を皮切りに、トヨタなどの法人営業で驚くべき成績を挙げられ、後に監査法人トーマツの顧問などを歴任されました。
 笠さんからは「営業は会う前に7割が決まる、お客様個人の好きなものごとがわかれば半分終わったも同じ」と教わりました。私が講演で伝える「かわいいやっちゃ」と思われるコミュニケーション術は笠さんから学んだのです。最初にお客様になってくださった方と最晩年まで個人的につきあう「情の深さ」に感動し、時には富士山頂から数百枚の暑中見舞いはがきを出す「遊び心」と「見えない努力」に驚いたのです。
 日興證券で出会った3人の師匠と、家族ぐるみのおつきあいができたことが、私の喜びであり誇りです。起業家になるための大きな財産だと心から感謝しているのです。

A.生涯の師を3人見つける

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Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?
Q14.もっと大きな仕事をしたい
Q15.未来を見通す目がほしい
Q16.すぐに現状に満足してしまう

2013年05月23日(木)更新

【新著連載】Q16.すぐに現状に満足してしまう

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Q.すぐに現状に満足してしまう

→A.「量的な拡大」よりも「質的な変化」を追いかける

 起業家の特長は、現状に満足しないことです。一つ目標を達成したとしても、それに飽き足らずに、もっと高みを目指して、次なる高度な目標が見つかるのです。
 もっと高度な目標といっても、それは、企業を大きくする、会員を増やすといった「量的な拡大」ばかりとは限りません。「量的な拡大」は、時には、行き過ぎた競争や、社会との不調和を招いて、かえって心を貧して、周囲を不幸せにすることも少なくありません。現状に満足しない真に充実した生き方は、「質的な進化」を伴うのです。

●「現状に満足しない生き方の5段階」

 かつて米国の心理学者のアブラハム・マズローが、欲求段階説を唱えました。人間の欲求が、五段階(1生理的欲求 2安全の欲求 3所属と愛の欲求 4承認(尊重)の欲求 5自己実現の欲求)で進化すると唱え、「自己実現の欲求」が最も高次な欲求と定義されました。しかし、私自身のささやかな体験では、「自己実現」よりも、さらに高次な目標が芽生えて、そこに向かってに挑戦したくなります。
 そこで私が体感した「現状に満足しない生き方の五段階」をご案内いたしましょう。
 まず、第一段階は、「贅沢欲求」です。実は、私の場合は、父が事業を成功させながら「贅沢欲求」を満たすプロセスを見ることで、生きる目標が進化しました。昭和10年生まれの父は、戦後の焼け野原、路地裏の自宅兼町工場を祖父から引き継ぎました。大学にも行かず、自分でトラックを運転して工場と取引先を往復しました。だからこそ、日本初のTシャツ専業メーカーして成功すると、次々に欲しかったものを手に入れて行きました。何と言っても、表通りに面した10階建ての自社ビル兼自宅がその象徴でしょう。しかし、あらゆる贅沢をした後、バブル崩壊を経て、父が晩年に語ったのは「物を持つと苦労する。贅沢せずとも幸せになれる」という境地でした。家族とレンタカーで三陸海岸をドライブして、名も無き漁港の防波堤に腰掛け「おにぎりを食べた」のが、一番美味しかったと、死の直前にしみじみ語ったのです。
 「贅沢欲求」=物欲が満たされると、次は「認証欲求」=地位・名誉欲が大切になります。日本ではお金や物を持っているだけでは尊敬されないからです。1995年当時、私は無名の中小企業経営者でした。しかし、日経インターネットアワード、経済産業省「IT経営百選」、東京商工会議所「勇気ある経営大賞」などを受賞し、マスメディアにも取り上げられると、明らかに対応が変わりました。悪い気はしませんが、嬉しいのは最初のうちだけでした。これまでの成果=既に終わった自分を褒められるよりも、これからの挑戦=未来に向けて走る自分を見て欲しいと思うようになるのです。

●真の自己実現は自己満足では得られない

 続いて「自己実現欲求」が首をもたげます。懸命に生きていれば、簡単にほめてくれないどころか、むしろ叱咤激励される「師匠」が見つかります。その師匠の生き方を見ていると、自分の足りない点や目指すべき姿が見えてきます。私は故・林雄二郎先生のように生きたいと憧れています。林先生は、1969年に「情報化社会」という名著で未来を予見し、日本財団やトヨタ財団など日本の社会貢献活動の先達をつとめ、90歳を過ぎても精力的に活躍していました。自分の専門領域を拡げながら、自分の潜在的な可能性を、死ぬまでずっと追求していく生き方に、私は強く惹かれるのです。
 しかし、真の「自己実現」は「自己満足」では得られないことにも気づきます。自分が気づいたこと学んだことを、より多くの人に広く活用して欲しいと願うようになるのです。東京商工会議所のIT推進担当役員や、日本財団CANPANセンターの理事として、インターネット活用の方法を、これまで1万人以上の方々にお伝えしてきました。さらに、明治大学講師、雑誌連載やビジネス書著書として、自分以外の人たちの「自己実現」支援=「他人実現」を達成することが生きがいになってきたのです。
 さらに「未来実現欲求」も、日に日に大きくなります。自分たちの子孫のために、美しい自然環境、地域固有の文化に根ざしたコミュニティ、愛情にあふれた手仕事の伝統などを、どうすれば未来に遺せるか、大きな責任を感じています。誇大妄想だと笑われるでしょうが、これまで培って来たスキルや、達人たちとのネットワークを、「私の死後はるか先に生きる人たち」の幸せに役立てたいと真剣に考えているのです。

A.「量的な拡大」よりも「質的な変化」を追いかける

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Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?
Q14.もっと大きな仕事をしたい
Q15.未来を見通す目がほしい

2013年05月22日(水)更新

【新著連載】Q15.未来を見通す目がほしい

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Q.未来を見通す目がほしい

→A.その時代で一番面白い人が集まる場所へ行く

 若い頃から、とるべきリスク=世のため人のためになり自分を磨くチャンス=が、はっきり見えている人は少ないでしょう。人一倍の熱意こそあっても、未来を見通す目や、世間とわたりあう知見が養われていないからです。
 とるべきリスク=チャンスを見いだすためには、人生を通じて教えを受けたくなるような「師匠」を見つけることが大切です。そして「師匠」の周りに集う、次代を切り開く多様な達人たちと、積極的に交流することから、新しい人生が始まるのです。師匠や仲間と行動を共にしながら一緒に考え、未来を読み解く経験を繰り返すことで、挑戦すべきことが少しずつ見えてきます。そして、時期が来れば、師匠から「その山に登れ」と背中を押されたり、「一緒に登ろう」と誘われることでしょう。

●人生を変える「師」と巡り会えた勉強会

 私も、師との出逢いなくして「今」は無かったはずです。もし縁者から届くメールマガジンで、橘川幸夫さんの名前が目に留まらず、勉強会に参加していなかったら、私の人生は変わっていたでしょう。不思議なことに、橘川幸夫さんが、その勉強会の講師をつとめたのも、私もその勉強会に参加したのも、その一回限りでした。たった一度だけの勉強会で「師」とめぐりあえたのは、まさに運命的ったと思います。
 橘川さんは、学生時代に読んでいたロック雑誌『ロッキング・オン』の創刊メンバーでした。当日、胸を高鳴らせて勉強会場に向かう途中、私は道に迷ってしまいました。そこで、ばったり橘川さんと出くわしたのです。お互いに名乗ってもいないのに、橘川さんが「あちら」と指差したのを今でも忘れません。まさに象徴的な出来事でした。
 その時、初めてお聴きした橘川さんの講演は、自己紹介だけで終わるという型破りのものでした。しかし、この人に付いて行きたいと思わせる何かがありました。名刺交換の際「教えを請いたい」とお伝えすると『企画書』というご著書を読むように言われました。その本を読んだ時の衝撃は、今も忘れられません。これからやりたいこと、やらなければならないことが、すべてその本に書いてあると感じたからです。
 それ以来、橘川さんの事務所や、勉強会、パーティに通うようになりました。そこで出会う方々が皆すごいのです。ひと言で言えば、通常は「接点がまったく無さそう」な熱い老若男女が集まっていました。官僚、経営者、編集長、アーティスト、ミュージシャン、学生、よくわからない人…とにかく、元気で才気あふれる人ばかりです。橘川さん曰く「自分はお金はないけれど、人材グルメ」ということでした。私も、将来は、橘川さんのように、人が自然に集まってくる人生を送ろうと決意したのです。

●「その時代で一番面白い人たちが集まる場所」に身を置く

 そして、橘川さんにご紹介いただいた数々のご縁で、私の人生は大きく開けました。
 例えば、10年以上連載が続いている日経パソコンの「焦点」コラムは、橘川さんに、当時の藤田編集長をご紹介いただいたところから始まりました。ですから、橘川さんに会っていなかったら、コラムニストやビジネス書作家の「私」はいなかったのです。
 憧れの師匠、日下公人先生とのご縁をいただいたのも、橘川さんのご縁なのです。橘川さんのシンクタンクの主任研究員・亀田武嗣さんが、私を日下先生の勉強会に呼んでくださったことが始まりでした。ご著書を愛読していた日下先生から直接教えを受けながら、ソフト化経済センターや社会貢献支援財団で、ご一緒に仕事をさせていただいているなんて未だに信じられません。これも、橘川さんの人財力のおかげです。
 橘川さんの教えの中でも、私に一番大きな影響を与えたものは、常に「その時代で一番面白い人たちが集まる場所」に身を置く生き方です。ロックに始まり、パソコン通信、インターネット、街おこし、地域の食文化、教育に至るまで、橘川さんが興味を持つところには、常に時代の最先端の人たちが集まり、何か新しいことが始まっていったのです。私も、橘川さんにテーマをいただいたり、お手伝いをしているうちに、気がつけば自分の道を歩み始めていました。新しいことに挑戦しながら、橘川さんに近づこうとしているうち、リスクを恐れず前へ前へと進めるようになりました。
 しかし、今、橘川さんにお会いしても、リスクをとりながら、未来を先取りする感性と活力には驚かされるのです。まだまだ追いつけない師がいることが幸せなのです。

A.その時代で一番面白い人が集まる場所へ行く

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Q12.人から笑われるのが怖いんです
Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?
Q14.もっと大きな仕事をしたい

2013年05月21日(火)更新

【新著連載】Q14.もっと大きな仕事に挑戦したい

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Q.もっと大きな仕事に挑戦したい

→A.これまで培った経験・スキル・出会いを活かして、大きな仕事に挑もう

 若い頃から、リスクをとって挑戦してきた人、達成感を味わってきた人は、人生の後半で、もっと大きな仕事に挑戦したくなるはずです。
 より大きなリターンを得るために大きなリスクをとる覚悟も知恵も備わっています。これまでの経験をもとに、社会の課題=ビジネスチャンスも見えてきて、より長期のビジョンが描けるようになってきます。同時に、時間の経過に耐えうる斬新なアイディアも浮かんできます。これまでのご縁をもとに、多くの信頼できるスペシャリストと同じ夢を見ながら、もっと大きな課題を解決するプロジェクトを起こせそうです。

●一見無関係なキャリアとネットワークが未来に役立つ

 私自身、50歳の節目を迎えて、人生の総仕上げとなる大きな事業に取り組もうとしています。日本の未来、地球の未来のために、ソーシャル・コミュニティ・ビジネスを起こせる社会起業家を輩出する「全く新しい教育の仕組み」を創造したいのです。ただ単に、起業家教育を行なうビジネススクールを創るわけではありません。中学校から大学院までのそれぞれのステージで、全国各地の地元密着企業、自治体、観光協会や商工団体などと交流し、一体となって「生きた授業=事業」を行なう仕組みです。
 今は、まだ夢のような話です。しかし、これまで私が取り組んできた仕事の数々が、共に歩んできた素晴らしい師匠や仲間とのご縁が、ひとつの方向を指し示しているように思えてなりません。私のベースには、大企業、ベンチャー、老舗中小企業での事業創造体験、経営者体験があります。加えて、中小企業やNPO支援団体の役員、観光地域づくり団体の役員、インターネットやソーシャルメディア活用の講師、大学やビジネススクールでの講師、そして自己啓発本の著者でもあります。一見、無関係な私のキャリアとネットワークが、これからの日本の未来に役立つと予感しています。
 この本を書くきっかけも、21世紀は日本の世紀と言っても良いほど大きなチャンスに恵まれているにも関わらず、リスクをとって事業を起こせる人財も、その人財を活かす仕組みも不足していることでした。明治大学でビジネス起業の講義を持ち、地元墨田区を始め全国の観光地域づくりに関わって、今の日本の問題点を痛感したのです。起業論の本を書く前に『「すぐやる!」技術』『「やり抜く!」技術』『「認められる!」技術』といったビジネスやコミュニケーションの基本から、若者たちに伝えざるを得なかったのです。

●リスクに挑んでいれば夢を抱き、実現しうる力を持てるようになれる

 さらに、インターネット、その進化系であるソーシャルメディアの活用スキルを、今ほど広めたいと願う時はありません。これから社会を変えて行く起業家たちに、ネットを活用した広報と自己プロデュース、師匠や仲間とのネットワーキングの方法論を、もっと伝えたいのです。
 1997年から講演やセミナーで1万人を超える人たちに、家業の久米繊維を救うためにワラをもつかむ気持ちで始めた私のノウハウをお伝えしてきました。しかし、数多くのネットワーカー=仲間たちと一緒に、もっと多くの人たちに体系的かつ継続的に伝えたいのです。幸い、私のライフワークの一つ、社会起業家をITで応援する日本財団CANPANセンターのネットワークも活用セミナーも進化しています。マスメディアやソーシャルメディアの達人の協力も仰いで、地域活性化に役立つカリキュラムを創り、教育機関で毎年受講できるようにしたいのです。
 同様に、日本全国で観光地域づくりに成功した実務者が集まる「観光地域づくりプラットフォーム」の仲間のノウハウも体系化して、老若男女が学べる機関が必要です。日本は成熟した先進国として、観光大国になれる潜在力を持っています。観光立国のグローバル戦略と地産地消のローカル戦略を同時に成功させなくてはなりません。
 そのためには、中学時代に、元気な地域の大人に出会って活性化し、高校生になったら、地域のイベントや事業に参加して知恵と経験を学ぶ。大学生になったら、地域の団体のインターンをしながら、就活と起業の実習を重ねる。そして、大学院では地域のキーパーソンが再度学んで、若者たちや地元企業や団体と一緒に事業を起こしていく。そんな社会起業家を輩出できる仕組みを、これから10年で実現していきます。
 こうした夢を抱き、実現しうる力を持つとは、若い時には想いもしませんでした。これもリスクを恐れず、寄り道を厭わず、常に新しい挑戦を続けたからなのです。

A.これまで培った経験・スキル・出会いを活かして、大きな仕事に挑もう

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Q12.人から笑われるのが怖いんです
Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?

2013年05月20日(月)更新

【新著連載】Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?

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Q.「とるべきリスク」とはどんなものでしょうか?

→A.「チャンス=先行者利得」が得られる「前向きなリスク」に挑戦しよう

 いつでもリスクとチャンスは隣り合わせです。ですから「とるべきリスク」とは、チャンス=先行者利得をつかむための「前向きなリスク」です。そのリスクをすばやく果敢にとることで、自分のスキルも磨かれ、ありがたいご縁も拡げられるはずです。
 時代の変化は、大きなうねりとなって押し寄せます。チャンスに満ちた時代は、変化が激しくてリスキーな時代でもあります。そのぶんだけ「前向きなリスク」の向こうに、「改革」と「事業創造」の種が隠されているのです。

●「現状維持=リスク」という健全な危機意識を

 例えば、私がインターネット社会到来の大波を予感したのは、1995年のことでした。まだ一部のマニアがパソコン通信を楽しんでいた時代ですから、ネット通販のお客様は限られています。検索エンジンも無いので、お目当ての商品を探すことさえできません。遅い電話回線しかないので、写真が画面表示されるのにも時間がかかりました。
 しかし、そんな時代から、インターネットを使っていたからこそ、日経インターネットアワードや、IT経営百選をいただいて、マスメディアの取材を多数受けることができました。思いがけず、講演、連載、出版の仕事も舞い込んで、ネットの世界のみならず、新聞、雑誌、テレビ、講演など、多くの機会で、お金をかけずにPRをさせていただき、新しいお客様と商品・サービスを開拓することができたのです。
 「前向きのリスク」をとらないと、時代に取り残される「後ろ向きのリスク」に見舞われます。もし私たちがインターネットを使わず、旧来のお客様だけと取引をしていたらと考えると怖くなります。なぜなら、多くのお客様が、グローバル経営×流通革命×インターネット革命の大波にさらわれて、廃業や倒産に追い込まれたからです。
 だからこそ、「現状維持=リスク」という健全な危機意識を常に持ち続けましょう。健全な危機意識こそが「リスク感知力」と「リスク突破力」を呼び起こすのです。
 多くの人たちは気づいていませんが、実社会は、ファンタジー映画によく見られる「吊り橋を渡る主人公の後ろで、次々に橋が崩れていくシーン」のようなものです。一見すると恐ろしい光景に見えますが、リスクのある場に身を置くと、不思議と本能が目覚めます。危険を事前に察知しながら、前へ前へと自然に走れるようになるものです。健全な危機意識を持っている人=リスク突破の本能が発動している人なのです。

●「ちょっと上の能力」を必要とすることに挑戦する

 そして、「前向きなリスク」を取る時のコツは、「適度」なリスクをとることです。自分が考えるよりも「ちょっと上の能力」を必要とする挑戦から始めましょう。なぜ「ちょっと上」かというと、私も含めて、多くの人は、自分の「潜在能力を低く見積もる」=「リスクを過大評価」する傾向があるからです。本来の潜在能力を呼び覚まして磨き上げるためにも、考えるより「ちょっと上」のリスクをとることが大切です。
 具体的に「とるべきリスク」それも「適度なリスク」を見きわめる最良の方法は、「リスクをとる達人=人生のよき先輩」たちと付き合うことです。達人たちの考え方や動き方を「真似る」「一緒に働く」ことや、恥ずかしがらずに「質問する」「相談する」ことが、「リスク感知力×リスク耐性×リスク突破力」を身につける早道なのです。

●「はやく始める」ことで成功確率が変わる

 ただし、リスクをとる達人は、自分の身の回りにいるとは限りません。ネットで調べて、積極的に異業種の達人が集まる勉強会や、NPO活動に参加してみましょう。これまでの自分と全く異なる「広くて深い情報源」を持つ達人や、波瀾万丈の現場体験で得た「知恵のかたまり」のような達人に出逢えるはずです。
 例えば、私は、インターネット前夜より、経営情報学会というITの専門家や大学教授が集まる学会に思い切って参加しました。入ってみたら、まったく場違いな場所で、知識も経験も足りない中小企業の後継者は戸惑うばかり。しかし、慶應大学・國領二郎先生、早稲田大学・平野 雅章先生、IBM・岡本明雄先生(故人)はじめ、多くの未来を見据えた達人たちと親しく接して、直接教えを受けることができました。 
 達人たちは、独自の情報網を持ち、現場に自ら足を運んだ実感と、統計の情報を同じように大切にして、自分で見て考えてすばやく行動していました。歴史上の成功や失敗の原則に学んで、「はやく始める」ことで成功確率が変わることを知っていたのです。

A.「チャンス=先行者利得」が得られる「前向きなリスク」に挑戦しよう

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い
Q12.人から笑われるのが怖いんです

2013年05月17日(金)更新

【新著連載】Q12.人から笑われるのが怖いんです

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.人から笑われるのが怖いんです

→A.人から笑われてこそ一人前、笑われる事業が未来を変える

 起業家が夢を実現するプロセスは、人から笑われることから始まるといっても過言ではありません。起業家は、自分の夢を誰かに語るたびに、「そんな夢みたいなこと」「そんな馬鹿げたこと」と笑われることになるからです。
「昔から誰もが挑戦してできなかった」「お金や手間がかかりすぎる」などと、できない理由を並べられて、やめるように言われるはずです。仲間になってほしい人、仲間だと思っていた人から、理解を得られないことは辛いものです。お客様のために新しい商品とサービスをと思っていても、最初は、肝心のお客様から支持されるどころか、反対に笑われることも少なくありません。理解してくださる人は、人から笑われるような人だけかもしれません。だから、ここで挫折してしまう人も多いでしょう。
 しかし、人から笑われてこそ起業家として一人前、笑われるような事業こそ未来を変えるインパクトを持つものなのです
 例えば、私が、これまで何を始めて、どれだけ笑われてきたか、今はどうなっているかを列挙してみましましょう。10年、20年と立てば、状況が変わって、笑う人もいなくなるとご理解いただけるはずです。

●大学の友人に笑われ、同僚に笑われ、お客様にも笑われた

 まずは就職です。多くの友人が一流の大企業に就職を決めていました。その中で、私はゲーム制作の創業ベンチャー「イマジニア」に新卒第一期として就職しました。内定を決めていたコンサルティング会社の役員にお詫びに行った時には、正気とは思えないと笑われました。もちろん大学の友人たちも、同じ気持ちだったでしょう。
 そして、おもちゃ屋さんへの飛び込み営業。私たちが創作した「株のファミコンゲーム」も「売れっこない」と笑われ続けました。銀座博品館で子供たちの前でデモをしては、「わけわかんない」と笑われ、八重洲ブックセンターの前でデモをしてチラシを配っては、ビジネスパーソンに無視され「株のゲーム?」と鼻で笑われました。
 しかし、おかげさまで「松本享の株式必勝学」は売れ、その後、ヒット作を続けたイマジニアは株式店頭公開をして、今も立派に事業を続けています。そして、私は、飛び込み営業や、公衆の面前でのデモをしても恥ずかしくない度胸が身に付きました。
 日興證券(当時)に転職した時も、みんなから笑われました。バブル真っ盛りなのに、証券会社は「株屋」のイメージで、どこか低く見られていたのでしょう。たしかに社内も「株屋」体質だったので、ファイナンシャルプランニングが必要という私たちの社内起業は半ば無視され、現場の担当者からは「現実をわかっていない」と笑われました。しかし、バブルが崩壊し、お客様も学習を重ねて、今や、ファイナンシャルプランナー=FPという職種も知れ渡るようになりました。私が真っ先に取ったFP資格を、金融機関の人が取るのは当たり前になったのです。

●ネットでの商売、環境に配慮したTシャツも笑われた

 そして、父の会社に戻る時も「Tシャツ屋になるのか」とみんなから笑われました。証券会社の敏腕常務から「糸へん(構造不況業種の繊維産業)に戻るって」と驚かれました。しかし、久米繊維は「失われた20年のデフレ期」を独立を守りながら生き抜き、私が務めた証券会社は外資に買収された後、都市銀行の傘下に入っています。
 父の会社に戻り、アップルのマッキントッシュに出会って「誰もがデザイナーになる」、インターネットに出会って「誰もネットでモノを売り買いするようになる」と直観して、新事業を始めた時にも、誰も相手にはしてくれませんでした。しかし、スマホやインターネット無しで、今、私たちは生きていられるでしょうか?
 再生可能エネルギー=グリーン電力証書を使い、オーガニックコットンで高価格高付加価値のTシャツを創ると言った時も、海外生産やファーストファッション当たり前の業界関係者から笑われました。しかし、福島第一原発の事故もあって、誰もが地球環境問題に関心を持つ時代になって、私たちの評価も高まっています。
 そして、人生の収穫期になった今、私が大学の同窓会などで友人に逢うと驚きます。一流企業につとめながら夢の無い人、愚痴をこぼす人が多いからです。
 あなたは「今は笑われるけれど、未来に心から笑う人生」を選びますか?
 それとも「今は笑うけれど、将来は愚痴をこぼすような人生」を選びますか?

A.人から笑われてこそ一人前、笑われる事業が未来を変える

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い

2013年05月14日(火)更新

【新著連載】Q11.大きな夢を語って笑われるのが怖い

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.大きな夢を語って笑われるのが怖い

→A.現実とのギャップの向こうに、自分の成長と周囲の支援がある

 誰しも自分の「力不足をさらけだす」のは「怖い」ものです。そして、もっと「怖い」のは、「若くして大きな夢を語る」こと、それを「笑われる」ことでしょう。
 自ら、実力以上の高い目標を公言してしまうことは、それ自体が、大きなリスクに見えるかもしれません。しかし、充実した人生を生き抜くことができるかどうかは、若いころの「夢と現実のギャップ」の大きさにあると言っても過言ではありません。20代、30代に知識や経験がないことは当たり前。問題は、大きな夢とのギャップを、どうやって埋めて行くかという、前向きな「心のベクトル」なのです。

●夢を抱くのに遅すぎることはない

 例えば、私たち久米繊維の中で、最も壮大な夢を描いて公言しているのは、NPO法人やCSR企業担当の竹内裕さんです。竹内さんは私よりも年上ですが、50代にさしかかった時に、3.11東日本大震災を体験して人生が変わりました。被災地の厳しい現実を見て回って、人生が変わったのです。夢を抱くのに遅すぎることはないのです。
 竹内さんの夢は、「復興支援で活躍する東北のNPOを、Tシャツで応援すること」です。東北各地のNPOのためのオリジナルTシャツを作って、その販売収益を寄付し続けるプロジェクトを始めています。その事業を通じて、竹内さんは10年後に壮大な夢を描いています。「岩手~宮城~福島の海岸線を、各地の復興支援Tシャツを着た人で埋め尽くし、手をつないで一列に並ぼう」というのです。そして、ギネスブックに登録しようとまで考えているのです。これは、言い換えれば、10年がかりで、数十万枚のTシャツを販売して、数億円単位の寄付をすることを意味します。

●プロジェクトへの熱い思いとその意義を伝える

 しかし、竹内さんは、Tシャツ製造の知識こそあれ、現地のNPOとのネットワークも、独自にTシャツ販売をする仕組みも持っていませんでした。被災地の惨状を見て「なんとかしたい」という熱い想いだけがすべてでした。そこで、竹内さんは、自分よりも大きな知恵や力がある人たちと共に夢を見て、協業するしかないと思いました。
 まずは、被災地のNPOを支援する強力なネットワークを持つ日本財団に協力を仰ぐことにしました。幸いにして、日本財団とは、JMAAチャリティTシャツアート展を毎年共催していて友好関係がありました。そこで、竹内さんは、日本財団のご担当者に、復興支援Tシャツプロジェクトの意義を熱く語りました。同時に、Tシャツのスペシャリストではあっても、復興支援の知識やNPOとのネットワークがないことも正直に伝えました。その大きな夢と誠実な姿勢が共感を生んだのでしょう。日本財団から、応援するNPOのみなさんをご紹介いただくことができたのです。

●夢を語りつつ、自分に足りないものをさらけ出す

 さらに、3.11復興支援Tシャツを広めるためには、メディアの協力も欠かせません。しかし、多くのマスメディアは、いずれ3.11のことを報道しなくなるでしょう。被災地支援にずっと関心をもつ人が定期購読するような「心あるメディア」の協力を仰ぐことが必要でした。
 そこで、竹内さんは、社会貢献に熱心な企業やNPOの経営者愛読する雑誌「オルタナ」に、復興支援Tシャツの構想を話そうと思い立ちました。
 竹内さんは、もともとオルタナの編集方針に共感し、個人で購読し応援していたので、担当者に耳を傾けていただけました。まず、久米繊維や自分の力だけでは、この壮大な構想を実現できないと告白しました。その上で、オルタナ読者の企業経営者と被災地のNPOを結んで、10年がかりの末永い復興支援を進めたいと熱く語ったのです。
 さらに、ネットで多くの人に知ってもらい、Tシャツを数多く販売をするためには、インターネットで力を持つ会社との協業も必要でした。そこで、3.11以降、真剣に被災地支援をしていたヤフーにプロジェクトを提案しました。当初は、ヤフーにネットショップを開くだけの小さなスタートでした。しかし、これからは、復興支援Tシャツに限らず、様々な社会貢献Tシャツを通じて社会を変えて行こうと話は進んでいます。
 こうして、竹内さんは、大きな夢を語りつつ、自分に足りないものもさらけ出すことで、日本財団、オルタナ、ヤフーという素晴らしい企業との協業を実現したのです。実際に起業する時に重要なのは、自分自身のノウハウ(Know How)ではなく、自分より力のある人を見つけて協業する力(Know Who)なのです。

A.現実とのギャップの向こうに、自分の成長と周囲の支援がある

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?

2013年05月13日(月)更新

【新著連載】Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?

Q.部下がいないうちは大きなことに挑戦できないのでしょうか? 

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

 そんなことはありません。今はソーシャル時代です。インターネットを活用して、社外の心ある仲間たちとネットワークでつながることで、大きなチームを作って、新しい事業を起こすこともできるのです。たしかに、これまでの「企業内自己完結時代」には、若いうちにできる挑戦は限られていました。今でも「企業内起業」は、ハードルが高いものです。ですから、まずは仕事を離れ、NPOのイベントなどにスタッフとして参加して経験を積んでから、リーダーとして自主企画に挑戦してみましょう。

●「行列のできるイベント」を主催した社内起業家

 たとえば、私たち久米繊維が誇る若き社内起業家に、村上典弘さんという優秀な幹部社員がいます。高校を卒業して、すぐにグループのプリント工場で修行して、その後、本社で営業の要として活躍しています。
 村上さんは、まだ30代の若者です。直属の部下もいません。しかし「すみだ日本の技と酒めぐり」という「行列のできるイベント」を2012年に主催し大成功を収めました。
 このイベントでは、全国の日本酒の蔵元に墨田区に集まっていただき、自慢のお酒の数々を楽しむ大試飲会を開催したのです。同時に、墨田区が誇る和菓子などの銘品名店や、伝統工芸・町工場の経営者のみなさんにもご参加いただきました。会場は熱気に包まれて、これまでにない出逢いや賑わいを創り出したのです。

●2つのソーシャルをフル活用すれば応援が集まる

 いったいどうやって、村上さんは、若くて知識も経験も乏しいのに、部下もいなければ、使える事業予算もないのに、このイベントを成功に導いたのでしょうか?
 それは、2つのソーシャルを活用したからです。
 1つめのソーシャルは、ソーシャルメディアです。インターネットの検索エンジン、メールはもちろんのこと、Twitter、Facebook、ブログなどのソーシャルメディアを、村上さんはフル活用したのです。
 村上さんは、5年がかりで、全国の名酒づくりの蔵元との関係作りを続けてきました。美味しいお酒をネットで調べ、自腹で買い求めては、ブログやメルマガなどでお酒の紹介記事を書くことから始めました。その上で、「日本酒を世界に広めるTシャツを作りたい。墨田区を日本酒の聖地にするイベントを開きたい」と熱いメールを出し続けました。とはいえ、日本酒の蔵元と言えば、百年単位の歴史と伝統を誇る老舗のオーナー経営者で、多忙な地元の名士でもあります。100通メールを出すと、10通返信が返ってきて、3社がTシャツを作ってくださるような塩梅でした。
 それでも、村上さんは、10社集まれば、小さな社内イベントを開くということを、地道に続けて行きました。もちろん、集客や販売の告知も、お金がかけられないので、自分自身でソーシャルメディアで発信しました。少しずつですが、イベントに参加してくださった酒好きのお客様からクチコミ・ネットコミが広がりました。その結果、村上さんを応援しようという、蔵元と日本酒ファンが増えていったのです。

●会社の同僚だけでは実現できないことをやってのける

 もう1つのソーシャルは、社会起業家のソーシャルなネットワークです。村上さんは、3.11後に縁あって、復興支援チャリティの日本酒イベントの実行委員をつとめました。もちろんボランティアです。そこで、村上さんは、100名近いボランティアのスタッフをとりまとめるリーダーとして、イベントの成功に積極的に関わることができました。そのイベントでの成功体験が、村上さんの自信につながり、自主開催イベントの大きなヒントになりました。「社会的に意味がある楽しいことには、多くの心あるボランティアが集まって、大きなことが実現できる」という確信を得たのです。
 そこで、「すみだ日本の技と酒めぐり」では、有志を募って数十名の実行委員会を作りました。そこには、それぞれの分野のエキスパートもいらっしゃいました。会社の同僚数名だけでは、とても実現できないことを、村上さんはやってのけたのです。
 ですから、社内でチャンスが見いだせない場合は、ぜひNPOのスタッフとして活躍の場を探してみてください。そこで経験を積んだら、自らリーダーとなって、イベントの開催などにチャレンジしてみてください。きっと、将来、リーダーになるための大きな自信と気づきが得られ、信頼できる仲間やパートナーにも恵まれるでしょう。ソーシャルなネットワークを活用すれば、ローリスク×ハイリターン起業を体得できるはずです。

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

【バックナンバー】
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Q09.失敗するのが怖い
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ボードメンバープロフィール

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くめ のぶゆき氏

久米信行(くめ・のぶゆき)

1963年東京下町生まれのTシャツメーカー三代目。

慶應義塾大学経済学部卒業後、87年、イマジニア株式会社に入社。ファミコンゲームソフトのゲームデザイナー兼飛び込み営業を担当する。
88年に日興證券株式会社に転職し、資金運用・相続診断システムの企画開発、ファイナンシャル・プランナー研修で活躍。
94年に家業である久米繊維工業株式会社の代表取締役に就任。

日本でこそ創りえるTシャツを目指し、グリーン電力とオーガニックコットンを生かす環境品質と、
クリエイターとJapanCoolを共創する文化品質を追求。
個人的なTシャツコレクションも数千枚に及び、全国のTシャツアート展・ワークショップ・エコイベントを支援する。

明治大学商学部「ベンチャービジネス論/起業プランニング論」講師。NPO法人CANPANセンター理事。東京商工会議所墨田支部IT分科会長。社団法人墨田区観光協会理事。

著書に、10万部を突破した『考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術』(日本実業出版社)、
Amazonでビジネス3部門第1位を獲得した『メール道』と『ブログ道』(ともにNTT出版)がある。
連載は、「経営者会報」「日経パソコン」「日経ネットマーケティング」「日経トップリーダー」ほか多数。

Twitter ID @nobukume
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