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2013年05月21日(火)更新

【新著連載】Q14.もっと大きな仕事に挑戦したい

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.もっと大きな仕事に挑戦したい

→A.これまで培った経験・スキル・出会いを活かして、大きな仕事に挑もう

 若い頃から、リスクをとって挑戦してきた人、達成感を味わってきた人は、人生の後半で、もっと大きな仕事に挑戦したくなるはずです。
 より大きなリターンを得るために大きなリスクをとる覚悟も知恵も備わっています。これまでの経験をもとに、社会の課題=ビジネスチャンスも見えてきて、より長期のビジョンが描けるようになってきます。同時に、時間の経過に耐えうる斬新なアイディアも浮かんできます。これまでのご縁をもとに、多くの信頼できるスペシャリストと同じ夢を見ながら、もっと大きな課題を解決するプロジェクトを起こせそうです。

●一見無関係なキャリアとネットワークが未来に役立つ

 私自身、50歳の節目を迎えて、人生の総仕上げとなる大きな事業に取り組もうとしています。日本の未来、地球の未来のために、ソーシャル・コミュニティ・ビジネスを起こせる社会起業家を輩出する「全く新しい教育の仕組み」を創造したいのです。ただ単に、起業家教育を行なうビジネススクールを創るわけではありません。中学校から大学院までのそれぞれのステージで、全国各地の地元密着企業、自治体、観光協会や商工団体などと交流し、一体となって「生きた授業=事業」を行なう仕組みです。
 今は、まだ夢のような話です。しかし、これまで私が取り組んできた仕事の数々が、共に歩んできた素晴らしい師匠や仲間とのご縁が、ひとつの方向を指し示しているように思えてなりません。私のベースには、大企業、ベンチャー、老舗中小企業での事業創造体験、経営者体験があります。加えて、中小企業やNPO支援団体の役員、観光地域づくり団体の役員、インターネットやソーシャルメディア活用の講師、大学やビジネススクールでの講師、そして自己啓発本の著者でもあります。一見、無関係な私のキャリアとネットワークが、これからの日本の未来に役立つと予感しています。
 この本を書くきっかけも、21世紀は日本の世紀と言っても良いほど大きなチャンスに恵まれているにも関わらず、リスクをとって事業を起こせる人財も、その人財を活かす仕組みも不足していることでした。明治大学でビジネス起業の講義を持ち、地元墨田区を始め全国の観光地域づくりに関わって、今の日本の問題点を痛感したのです。起業論の本を書く前に『「すぐやる!」技術』『「やり抜く!」技術』『「認められる!」技術』といったビジネスやコミュニケーションの基本から、若者たちに伝えざるを得なかったのです。

●リスクに挑んでいれば夢を抱き、実現しうる力を持てるようになれる

 さらに、インターネット、その進化系であるソーシャルメディアの活用スキルを、今ほど広めたいと願う時はありません。これから社会を変えて行く起業家たちに、ネットを活用した広報と自己プロデュース、師匠や仲間とのネットワーキングの方法論を、もっと伝えたいのです。
 1997年から講演やセミナーで1万人を超える人たちに、家業の久米繊維を救うためにワラをもつかむ気持ちで始めた私のノウハウをお伝えしてきました。しかし、数多くのネットワーカー=仲間たちと一緒に、もっと多くの人たちに体系的かつ継続的に伝えたいのです。幸い、私のライフワークの一つ、社会起業家をITで応援する日本財団CANPANセンターのネットワークも活用セミナーも進化しています。マスメディアやソーシャルメディアの達人の協力も仰いで、地域活性化に役立つカリキュラムを創り、教育機関で毎年受講できるようにしたいのです。
 同様に、日本全国で観光地域づくりに成功した実務者が集まる「観光地域づくりプラットフォーム」の仲間のノウハウも体系化して、老若男女が学べる機関が必要です。日本は成熟した先進国として、観光大国になれる潜在力を持っています。観光立国のグローバル戦略と地産地消のローカル戦略を同時に成功させなくてはなりません。
 そのためには、中学時代に、元気な地域の大人に出会って活性化し、高校生になったら、地域のイベントや事業に参加して知恵と経験を学ぶ。大学生になったら、地域の団体のインターンをしながら、就活と起業の実習を重ねる。そして、大学院では地域のキーパーソンが再度学んで、若者たちや地元企業や団体と一緒に事業を起こしていく。そんな社会起業家を輩出できる仕組みを、これから10年で実現していきます。
 こうした夢を抱き、実現しうる力を持つとは、若い時には想いもしませんでした。これもリスクを恐れず、寄り道を厭わず、常に新しい挑戦を続けたからなのです。

A.これまで培った経験・スキル・出会いを活かして、大きな仕事に挑もう

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い
Q12.人から笑われるのが怖いんです
Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?

2013年05月20日(月)更新

【新著連載】Q13.「とるべきリスク」とはどんなものですか?

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.「とるべきリスク」とはどんなものでしょうか?

→A.「チャンス=先行者利得」が得られる「前向きなリスク」に挑戦しよう

 いつでもリスクとチャンスは隣り合わせです。ですから「とるべきリスク」とは、チャンス=先行者利得をつかむための「前向きなリスク」です。そのリスクをすばやく果敢にとることで、自分のスキルも磨かれ、ありがたいご縁も拡げられるはずです。
 時代の変化は、大きなうねりとなって押し寄せます。チャンスに満ちた時代は、変化が激しくてリスキーな時代でもあります。そのぶんだけ「前向きなリスク」の向こうに、「改革」と「事業創造」の種が隠されているのです。

●「現状維持=リスク」という健全な危機意識を

 例えば、私がインターネット社会到来の大波を予感したのは、1995年のことでした。まだ一部のマニアがパソコン通信を楽しんでいた時代ですから、ネット通販のお客様は限られています。検索エンジンも無いので、お目当ての商品を探すことさえできません。遅い電話回線しかないので、写真が画面表示されるのにも時間がかかりました。
 しかし、そんな時代から、インターネットを使っていたからこそ、日経インターネットアワードや、IT経営百選をいただいて、マスメディアの取材を多数受けることができました。思いがけず、講演、連載、出版の仕事も舞い込んで、ネットの世界のみならず、新聞、雑誌、テレビ、講演など、多くの機会で、お金をかけずにPRをさせていただき、新しいお客様と商品・サービスを開拓することができたのです。
 「前向きのリスク」をとらないと、時代に取り残される「後ろ向きのリスク」に見舞われます。もし私たちがインターネットを使わず、旧来のお客様だけと取引をしていたらと考えると怖くなります。なぜなら、多くのお客様が、グローバル経営×流通革命×インターネット革命の大波にさらわれて、廃業や倒産に追い込まれたからです。
 だからこそ、「現状維持=リスク」という健全な危機意識を常に持ち続けましょう。健全な危機意識こそが「リスク感知力」と「リスク突破力」を呼び起こすのです。
 多くの人たちは気づいていませんが、実社会は、ファンタジー映画によく見られる「吊り橋を渡る主人公の後ろで、次々に橋が崩れていくシーン」のようなものです。一見すると恐ろしい光景に見えますが、リスクのある場に身を置くと、不思議と本能が目覚めます。危険を事前に察知しながら、前へ前へと自然に走れるようになるものです。健全な危機意識を持っている人=リスク突破の本能が発動している人なのです。

●「ちょっと上の能力」を必要とすることに挑戦する

 そして、「前向きなリスク」を取る時のコツは、「適度」なリスクをとることです。自分が考えるよりも「ちょっと上の能力」を必要とする挑戦から始めましょう。なぜ「ちょっと上」かというと、私も含めて、多くの人は、自分の「潜在能力を低く見積もる」=「リスクを過大評価」する傾向があるからです。本来の潜在能力を呼び覚まして磨き上げるためにも、考えるより「ちょっと上」のリスクをとることが大切です。
 具体的に「とるべきリスク」それも「適度なリスク」を見きわめる最良の方法は、「リスクをとる達人=人生のよき先輩」たちと付き合うことです。達人たちの考え方や動き方を「真似る」「一緒に働く」ことや、恥ずかしがらずに「質問する」「相談する」ことが、「リスク感知力×リスク耐性×リスク突破力」を身につける早道なのです。

●「はやく始める」ことで成功確率が変わる

 ただし、リスクをとる達人は、自分の身の回りにいるとは限りません。ネットで調べて、積極的に異業種の達人が集まる勉強会や、NPO活動に参加してみましょう。これまでの自分と全く異なる「広くて深い情報源」を持つ達人や、波瀾万丈の現場体験で得た「知恵のかたまり」のような達人に出逢えるはずです。
 例えば、私は、インターネット前夜より、経営情報学会というITの専門家や大学教授が集まる学会に思い切って参加しました。入ってみたら、まったく場違いな場所で、知識も経験も足りない中小企業の後継者は戸惑うばかり。しかし、慶應大学・國領二郎先生、早稲田大学・平野 雅章先生、IBM・岡本明雄先生(故人)はじめ、多くの未来を見据えた達人たちと親しく接して、直接教えを受けることができました。 
 達人たちは、独自の情報網を持ち、現場に自ら足を運んだ実感と、統計の情報を同じように大切にして、自分で見て考えてすばやく行動していました。歴史上の成功や失敗の原則に学んで、「はやく始める」ことで成功確率が変わることを知っていたのです。

A.「チャンス=先行者利得」が得られる「前向きなリスク」に挑戦しよう

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い
Q12.人から笑われるのが怖いんです

2013年05月17日(金)更新

【新著連載】Q12.人から笑われるのが怖いんです

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.人から笑われるのが怖いんです

→A.人から笑われてこそ一人前、笑われる事業が未来を変える

 起業家が夢を実現するプロセスは、人から笑われることから始まるといっても過言ではありません。起業家は、自分の夢を誰かに語るたびに、「そんな夢みたいなこと」「そんな馬鹿げたこと」と笑われることになるからです。
「昔から誰もが挑戦してできなかった」「お金や手間がかかりすぎる」などと、できない理由を並べられて、やめるように言われるはずです。仲間になってほしい人、仲間だと思っていた人から、理解を得られないことは辛いものです。お客様のために新しい商品とサービスをと思っていても、最初は、肝心のお客様から支持されるどころか、反対に笑われることも少なくありません。理解してくださる人は、人から笑われるような人だけかもしれません。だから、ここで挫折してしまう人も多いでしょう。
 しかし、人から笑われてこそ起業家として一人前、笑われるような事業こそ未来を変えるインパクトを持つものなのです
 例えば、私が、これまで何を始めて、どれだけ笑われてきたか、今はどうなっているかを列挙してみましましょう。10年、20年と立てば、状況が変わって、笑う人もいなくなるとご理解いただけるはずです。

●大学の友人に笑われ、同僚に笑われ、お客様にも笑われた

 まずは就職です。多くの友人が一流の大企業に就職を決めていました。その中で、私はゲーム制作の創業ベンチャー「イマジニア」に新卒第一期として就職しました。内定を決めていたコンサルティング会社の役員にお詫びに行った時には、正気とは思えないと笑われました。もちろん大学の友人たちも、同じ気持ちだったでしょう。
 そして、おもちゃ屋さんへの飛び込み営業。私たちが創作した「株のファミコンゲーム」も「売れっこない」と笑われ続けました。銀座博品館で子供たちの前でデモをしては、「わけわかんない」と笑われ、八重洲ブックセンターの前でデモをしてチラシを配っては、ビジネスパーソンに無視され「株のゲーム?」と鼻で笑われました。
 しかし、おかげさまで「松本享の株式必勝学」は売れ、その後、ヒット作を続けたイマジニアは株式店頭公開をして、今も立派に事業を続けています。そして、私は、飛び込み営業や、公衆の面前でのデモをしても恥ずかしくない度胸が身に付きました。
 日興證券(当時)に転職した時も、みんなから笑われました。バブル真っ盛りなのに、証券会社は「株屋」のイメージで、どこか低く見られていたのでしょう。たしかに社内も「株屋」体質だったので、ファイナンシャルプランニングが必要という私たちの社内起業は半ば無視され、現場の担当者からは「現実をわかっていない」と笑われました。しかし、バブルが崩壊し、お客様も学習を重ねて、今や、ファイナンシャルプランナー=FPという職種も知れ渡るようになりました。私が真っ先に取ったFP資格を、金融機関の人が取るのは当たり前になったのです。

●ネットでの商売、環境に配慮したTシャツも笑われた

 そして、父の会社に戻る時も「Tシャツ屋になるのか」とみんなから笑われました。証券会社の敏腕常務から「糸へん(構造不況業種の繊維産業)に戻るって」と驚かれました。しかし、久米繊維は「失われた20年のデフレ期」を独立を守りながら生き抜き、私が務めた証券会社は外資に買収された後、都市銀行の傘下に入っています。
 父の会社に戻り、アップルのマッキントッシュに出会って「誰もがデザイナーになる」、インターネットに出会って「誰もネットでモノを売り買いするようになる」と直観して、新事業を始めた時にも、誰も相手にはしてくれませんでした。しかし、スマホやインターネット無しで、今、私たちは生きていられるでしょうか?
 再生可能エネルギー=グリーン電力証書を使い、オーガニックコットンで高価格高付加価値のTシャツを創ると言った時も、海外生産やファーストファッション当たり前の業界関係者から笑われました。しかし、福島第一原発の事故もあって、誰もが地球環境問題に関心を持つ時代になって、私たちの評価も高まっています。
 そして、人生の収穫期になった今、私が大学の同窓会などで友人に逢うと驚きます。一流企業につとめながら夢の無い人、愚痴をこぼす人が多いからです。
 あなたは「今は笑われるけれど、未来に心から笑う人生」を選びますか?
 それとも「今は笑うけれど、将来は愚痴をこぼすような人生」を選びますか?

A.人から笑われてこそ一人前、笑われる事業が未来を変える

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?
Q11.自分の力不足をさらけ出すのが怖い

2013年05月14日(火)更新

【新著連載】Q11.大きな夢を語って笑われるのが怖い

15万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております! ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。

Q.大きな夢を語って笑われるのが怖い

→A.現実とのギャップの向こうに、自分の成長と周囲の支援がある

 誰しも自分の「力不足をさらけだす」のは「怖い」ものです。そして、もっと「怖い」のは、「若くして大きな夢を語る」こと、それを「笑われる」ことでしょう。
 自ら、実力以上の高い目標を公言してしまうことは、それ自体が、大きなリスクに見えるかもしれません。しかし、充実した人生を生き抜くことができるかどうかは、若いころの「夢と現実のギャップ」の大きさにあると言っても過言ではありません。20代、30代に知識や経験がないことは当たり前。問題は、大きな夢とのギャップを、どうやって埋めて行くかという、前向きな「心のベクトル」なのです。

●夢を抱くのに遅すぎることはない

 例えば、私たち久米繊維の中で、最も壮大な夢を描いて公言しているのは、NPO法人やCSR企業担当の竹内裕さんです。竹内さんは私よりも年上ですが、50代にさしかかった時に、3.11東日本大震災を体験して人生が変わりました。被災地の厳しい現実を見て回って、人生が変わったのです。夢を抱くのに遅すぎることはないのです。
 竹内さんの夢は、「復興支援で活躍する東北のNPOを、Tシャツで応援すること」です。東北各地のNPOのためのオリジナルTシャツを作って、その販売収益を寄付し続けるプロジェクトを始めています。その事業を通じて、竹内さんは10年後に壮大な夢を描いています。「岩手~宮城~福島の海岸線を、各地の復興支援Tシャツを着た人で埋め尽くし、手をつないで一列に並ぼう」というのです。そして、ギネスブックに登録しようとまで考えているのです。これは、言い換えれば、10年がかりで、数十万枚のTシャツを販売して、数億円単位の寄付をすることを意味します。

●プロジェクトへの熱い思いとその意義を伝える

 しかし、竹内さんは、Tシャツ製造の知識こそあれ、現地のNPOとのネットワークも、独自にTシャツ販売をする仕組みも持っていませんでした。被災地の惨状を見て「なんとかしたい」という熱い想いだけがすべてでした。そこで、竹内さんは、自分よりも大きな知恵や力がある人たちと共に夢を見て、協業するしかないと思いました。
 まずは、被災地のNPOを支援する強力なネットワークを持つ日本財団に協力を仰ぐことにしました。幸いにして、日本財団とは、JMAAチャリティTシャツアート展を毎年共催していて友好関係がありました。そこで、竹内さんは、日本財団のご担当者に、復興支援Tシャツプロジェクトの意義を熱く語りました。同時に、Tシャツのスペシャリストではあっても、復興支援の知識やNPOとのネットワークがないことも正直に伝えました。その大きな夢と誠実な姿勢が共感を生んだのでしょう。日本財団から、応援するNPOのみなさんをご紹介いただくことができたのです。

●夢を語りつつ、自分に足りないものをさらけ出す

 さらに、3.11復興支援Tシャツを広めるためには、メディアの協力も欠かせません。しかし、多くのマスメディアは、いずれ3.11のことを報道しなくなるでしょう。被災地支援にずっと関心をもつ人が定期購読するような「心あるメディア」の協力を仰ぐことが必要でした。
 そこで、竹内さんは、社会貢献に熱心な企業やNPOの経営者愛読する雑誌「オルタナ」に、復興支援Tシャツの構想を話そうと思い立ちました。
 竹内さんは、もともとオルタナの編集方針に共感し、個人で購読し応援していたので、担当者に耳を傾けていただけました。まず、久米繊維や自分の力だけでは、この壮大な構想を実現できないと告白しました。その上で、オルタナ読者の企業経営者と被災地のNPOを結んで、10年がかりの末永い復興支援を進めたいと熱く語ったのです。
 さらに、ネットで多くの人に知ってもらい、Tシャツを数多く販売をするためには、インターネットで力を持つ会社との協業も必要でした。そこで、3.11以降、真剣に被災地支援をしていたヤフーにプロジェクトを提案しました。当初は、ヤフーにネットショップを開くだけの小さなスタートでした。しかし、これからは、復興支援Tシャツに限らず、様々な社会貢献Tシャツを通じて社会を変えて行こうと話は進んでいます。
 こうして、竹内さんは、大きな夢を語りつつ、自分に足りないものもさらけ出すことで、日本財団、オルタナ、ヤフーという素晴らしい企業との協業を実現したのです。実際に起業する時に重要なのは、自分自身のノウハウ(Know How)ではなく、自分より力のある人を見つけて協業する力(Know Who)なのです。

A.現実とのギャップの向こうに、自分の成長と周囲の支援がある

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Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い
Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?

2013年05月13日(月)更新

【新著連載】Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?

Q.部下がいないうちは大きなことに挑戦できないのでしょうか? 

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

 そんなことはありません。今はソーシャル時代です。インターネットを活用して、社外の心ある仲間たちとネットワークでつながることで、大きなチームを作って、新しい事業を起こすこともできるのです。たしかに、これまでの「企業内自己完結時代」には、若いうちにできる挑戦は限られていました。今でも「企業内起業」は、ハードルが高いものです。ですから、まずは仕事を離れ、NPOのイベントなどにスタッフとして参加して経験を積んでから、リーダーとして自主企画に挑戦してみましょう。

●「行列のできるイベント」を主催した社内起業家

 たとえば、私たち久米繊維が誇る若き社内起業家に、村上典弘さんという優秀な幹部社員がいます。高校を卒業して、すぐにグループのプリント工場で修行して、その後、本社で営業の要として活躍しています。
 村上さんは、まだ30代の若者です。直属の部下もいません。しかし「すみだ日本の技と酒めぐり」という「行列のできるイベント」を2012年に主催し大成功を収めました。
 このイベントでは、全国の日本酒の蔵元に墨田区に集まっていただき、自慢のお酒の数々を楽しむ大試飲会を開催したのです。同時に、墨田区が誇る和菓子などの銘品名店や、伝統工芸・町工場の経営者のみなさんにもご参加いただきました。会場は熱気に包まれて、これまでにない出逢いや賑わいを創り出したのです。

●2つのソーシャルをフル活用すれば応援が集まる

 いったいどうやって、村上さんは、若くて知識も経験も乏しいのに、部下もいなければ、使える事業予算もないのに、このイベントを成功に導いたのでしょうか?
 それは、2つのソーシャルを活用したからです。
 1つめのソーシャルは、ソーシャルメディアです。インターネットの検索エンジン、メールはもちろんのこと、Twitter、Facebook、ブログなどのソーシャルメディアを、村上さんはフル活用したのです。
 村上さんは、5年がかりで、全国の名酒づくりの蔵元との関係作りを続けてきました。美味しいお酒をネットで調べ、自腹で買い求めては、ブログやメルマガなどでお酒の紹介記事を書くことから始めました。その上で、「日本酒を世界に広めるTシャツを作りたい。墨田区を日本酒の聖地にするイベントを開きたい」と熱いメールを出し続けました。とはいえ、日本酒の蔵元と言えば、百年単位の歴史と伝統を誇る老舗のオーナー経営者で、多忙な地元の名士でもあります。100通メールを出すと、10通返信が返ってきて、3社がTシャツを作ってくださるような塩梅でした。
 それでも、村上さんは、10社集まれば、小さな社内イベントを開くということを、地道に続けて行きました。もちろん、集客や販売の告知も、お金がかけられないので、自分自身でソーシャルメディアで発信しました。少しずつですが、イベントに参加してくださった酒好きのお客様からクチコミ・ネットコミが広がりました。その結果、村上さんを応援しようという、蔵元と日本酒ファンが増えていったのです。

●会社の同僚だけでは実現できないことをやってのける

 もう1つのソーシャルは、社会起業家のソーシャルなネットワークです。村上さんは、3.11後に縁あって、復興支援チャリティの日本酒イベントの実行委員をつとめました。もちろんボランティアです。そこで、村上さんは、100名近いボランティアのスタッフをとりまとめるリーダーとして、イベントの成功に積極的に関わることができました。そのイベントでの成功体験が、村上さんの自信につながり、自主開催イベントの大きなヒントになりました。「社会的に意味がある楽しいことには、多くの心あるボランティアが集まって、大きなことが実現できる」という確信を得たのです。
 そこで、「すみだ日本の技と酒めぐり」では、有志を募って数十名の実行委員会を作りました。そこには、それぞれの分野のエキスパートもいらっしゃいました。会社の同僚数名だけでは、とても実現できないことを、村上さんはやってのけたのです。
 ですから、社内でチャンスが見いだせない場合は、ぜひNPOのスタッフとして活躍の場を探してみてください。そこで経験を積んだら、自らリーダーとなって、イベントの開催などにチャレンジしてみてください。きっと、将来、リーダーになるための大きな自信と気づきが得られ、信頼できる仲間やパートナーにも恵まれるでしょう。ソーシャルなネットワークを活用すれば、ローリスク×ハイリターン起業を体得できるはずです。

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

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Q09.失敗するのが怖い
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