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2013年05月13日(月)更新

【新著連載】Q10.部下がいないうちは大きなことに挑戦できない?

Q.部下がいないうちは大きなことに挑戦できないのでしょうか? 

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

 そんなことはありません。今はソーシャル時代です。インターネットを活用して、社外の心ある仲間たちとネットワークでつながることで、大きなチームを作って、新しい事業を起こすこともできるのです。たしかに、これまでの「企業内自己完結時代」には、若いうちにできる挑戦は限られていました。今でも「企業内起業」は、ハードルが高いものです。ですから、まずは仕事を離れ、NPOのイベントなどにスタッフとして参加して経験を積んでから、リーダーとして自主企画に挑戦してみましょう。

●「行列のできるイベント」を主催した社内起業家

 たとえば、私たち久米繊維が誇る若き社内起業家に、村上典弘さんという優秀な幹部社員がいます。高校を卒業して、すぐにグループのプリント工場で修行して、その後、本社で営業の要として活躍しています。
 村上さんは、まだ30代の若者です。直属の部下もいません。しかし「すみだ日本の技と酒めぐり」という「行列のできるイベント」を2012年に主催し大成功を収めました。
 このイベントでは、全国の日本酒の蔵元に墨田区に集まっていただき、自慢のお酒の数々を楽しむ大試飲会を開催したのです。同時に、墨田区が誇る和菓子などの銘品名店や、伝統工芸・町工場の経営者のみなさんにもご参加いただきました。会場は熱気に包まれて、これまでにない出逢いや賑わいを創り出したのです。

●2つのソーシャルをフル活用すれば応援が集まる

 いったいどうやって、村上さんは、若くて知識も経験も乏しいのに、部下もいなければ、使える事業予算もないのに、このイベントを成功に導いたのでしょうか?
 それは、2つのソーシャルを活用したからです。
 1つめのソーシャルは、ソーシャルメディアです。インターネットの検索エンジン、メールはもちろんのこと、Twitter、Facebook、ブログなどのソーシャルメディアを、村上さんはフル活用したのです。
 村上さんは、5年がかりで、全国の名酒づくりの蔵元との関係作りを続けてきました。美味しいお酒をネットで調べ、自腹で買い求めては、ブログやメルマガなどでお酒の紹介記事を書くことから始めました。その上で、「日本酒を世界に広めるTシャツを作りたい。墨田区を日本酒の聖地にするイベントを開きたい」と熱いメールを出し続けました。とはいえ、日本酒の蔵元と言えば、百年単位の歴史と伝統を誇る老舗のオーナー経営者で、多忙な地元の名士でもあります。100通メールを出すと、10通返信が返ってきて、3社がTシャツを作ってくださるような塩梅でした。
 それでも、村上さんは、10社集まれば、小さな社内イベントを開くということを、地道に続けて行きました。もちろん、集客や販売の告知も、お金がかけられないので、自分自身でソーシャルメディアで発信しました。少しずつですが、イベントに参加してくださった酒好きのお客様からクチコミ・ネットコミが広がりました。その結果、村上さんを応援しようという、蔵元と日本酒ファンが増えていったのです。

●会社の同僚だけでは実現できないことをやってのける

 もう1つのソーシャルは、社会起業家のソーシャルなネットワークです。村上さんは、3.11後に縁あって、復興支援チャリティの日本酒イベントの実行委員をつとめました。もちろんボランティアです。そこで、村上さんは、100名近いボランティアのスタッフをとりまとめるリーダーとして、イベントの成功に積極的に関わることができました。そのイベントでの成功体験が、村上さんの自信につながり、自主開催イベントの大きなヒントになりました。「社会的に意味がある楽しいことには、多くの心あるボランティアが集まって、大きなことが実現できる」という確信を得たのです。
 そこで、「すみだ日本の技と酒めぐり」では、有志を募って数十名の実行委員会を作りました。そこには、それぞれの分野のエキスパートもいらっしゃいました。会社の同僚数名だけでは、とても実現できないことを、村上さんはやってのけたのです。
 ですから、社内でチャンスが見いだせない場合は、ぜひNPOのスタッフとして活躍の場を探してみてください。そこで経験を積んだら、自らリーダーとなって、イベントの開催などにチャレンジしてみてください。きっと、将来、リーダーになるための大きな自信と気づきが得られ、信頼できる仲間やパートナーにも恵まれるでしょう。ソーシャルなネットワークを活用すれば、ローリスク×ハイリターン起業を体得できるはずです。

→社外イベントやNPO活動にチャンスがある!

【バックナンバー】
Q08.若くて経験もなくて不安です
Q09.失敗するのが怖い