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【新著連載】Q22. 困ったときに人の力を借りるのが苦手です

投稿日時:2013/06/07(金) 09:30rss

Q. 困ったときに人の力を借りるのが苦手です

→A.「Know HOW」よりも「Know WHO」が成功のカギ

 起業家は、自分の力だけで解決できることなどないことを知っています。そして、取り組む事業が新しければ新しいほど、困難であればあるほど、自分よりも知恵も実力もある人の力を結集できるかが「成功のカギ」であると心得ています。
 しかし、多くの人は、困ったときに人の力を借りることをためらいます。
 「こんなこともできないのかと笑われそう」というちっぽけなプライド、「自分の仕事は自分でやれと怒られそう」という恐怖心、「優秀な人は忙しくて手伝ってくれっこない」という決めつけやあきらめなどが、邪魔をするのでしょう。
 結局のところ、頼みやすい同僚や部下にお願いするか、下請け業者に丸投げしてしまうなど、安易でストレスのない方法に走るかもしれません。

●「自分のスキル」より「優秀な人材」を見つける

 私が日興證券時代に仕えた上司、笠榮一さん(故人)は、営業の天才としてお客様を魅了するだけではなく、社内のスペシャリストをまきこむ天才でもありました。
 笠さんは、高校を卒業後に日興證券に入社され、まずは、個人向け営業として頭角を現します。そして、トヨタの法人担当となって信頼を勝ち得て、空前の営業成績をあげられました。驚くことに、晩年は、当時トヨタの財務担当だった方に請われて、新設されたトヨタの関連会社の顧問にまでなるのです。
 高校卒業のキャリアしかなかった笠さんが、トヨタ銀行と称される金融強者を相手に信頼を勝ち得ることができた秘密は、お客様個人の心をつかめただけではありませんでした。社内外の達人を巻き込んで、積極的に協力してもらえたからなのです。
 まず、笠さんは、お客様の真のニーズを感じ取る力に長けていました。同時に、自分自身に解決するスキル(Know How)がない場合が多いこともわかっていました。そのかわり、お客様の問題を解決するのに、もっともふさわしい優秀な人材が誰か(Know Who)を調べて、知り尽くしていたのです。そして、笠さんに請われると、スペシャリストは、みんな喜んで全力で仕事を手伝ったのです。
 それはいったいなぜでしょうか? もちろん、それが仕事ですし、トヨタが会社にとって大切なお客様だったこともあるでしょう。しかし、それだけではなかったのです。
 笠さんは、社外のお客様には、会社の経費で接待をしましたが、社内の優秀な若者たちには、自腹でおごって接待!をしていました。笠さんは、社内での地位と、実際のプロのスキルとが連動していないと理解していました。株の売り買いだけだった時代から、高度な数学=金融工学を必要とする時代に変わっていたので、むしろ若いスタッフの中に知恵とスキルがある人がいると知っていたのです。異部門なのに、いつもかわいがってくださる先輩から、ある日こう言われたらどうでしょう。「トヨタから○○に一番詳しい人を連れてきてくれと言われたので、○○君、一緒に行ってくれるか?」、そして先方の偉い方の前で、「日興證券で一番○○に詳しい○○君をお連れしました」と言われたら、みなさんならどう感じますか?

●社内で一番○○に詳しい人を探して教えを

 私も、証券業界の知識はないかわりに、ファイナンシャルプランニングやITの知識があったこともあり、何度もおごっていただきました。そして、私にとってのお客様=全国の支店長や課長の前で、やはり過分な紹介をいただいたのです。「笠さんのためなら、がんばって一番良い仕事をしなくては」と思わないはずがありません。
 これは、もちろん年下のみなさんでも応用できる方法です。社内で一番○○に詳しい人を探し出して、ランチをご一緒させてもらってください。懸命に教えをいただき、自分のやりたい事業について熱く語れば、きっとかわいがってくださるはずです。一緒に飲みに誘ってくださるかもしれません。そして、ここぞという時に言うのです。「私が今挑戦していることで壁にぶつかってしまいました。社内で一番○○に詳しい○○先輩のお知恵とお力をぜひお借りしたいのです。」
 きっと「かわいいやっちゃ」と大きな力を貸してくださることでしょう。
 ご恩返しは、自分が成長して、いつか大きな実績をあげることです。その時、心からのお礼を伝えましょう。いつか自分が教わったことを後輩たちに引き継ぎましょう。

A.「Know HOW」よりも「Know WHO」が成功のカギ

ボードメンバープロフィール

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くめ のぶゆき氏

久米信行(くめ・のぶゆき)

1963年東京下町生まれのTシャツメーカー三代目。

慶應義塾大学経済学部卒業後、87年、イマジニア株式会社に入社。ファミコンゲームソフトのゲームデザイナー兼飛び込み営業を担当する。
88年に日興證券株式会社に転職し、資金運用・相続診断システムの企画開発、ファイナンシャル・プランナー研修で活躍。
94年に家業である久米繊維工業株式会社の代表取締役に就任。

日本でこそ創りえるTシャツを目指し、グリーン電力とオーガニックコットンを生かす環境品質と、
クリエイターとJapanCoolを共創する文化品質を追求。
個人的なTシャツコレクションも数千枚に及び、全国のTシャツアート展・ワークショップ・エコイベントを支援する。

明治大学商学部「ベンチャービジネス論/起業プランニング論」講師。NPO法人CANPANセンター理事。東京商工会議所墨田支部IT分科会長。社団法人墨田区観光協会理事。

著書に、10万部を突破した『考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術』(日本実業出版社)、
Amazonでビジネス3部門第1位を獲得した『メール道』と『ブログ道』(ともにNTT出版)がある。
連載は、「経営者会報」「日経パソコン」「日経ネットマーケティング」「日経トップリーダー」ほか多数。

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